不動産は企業にとって非常に重要な要素であり、単にお金の問題だけでなく、営業拠点としても役立ちます。
事業を行う場所を選ぶことは、企業にとって非常に重要な経営判断です。
不動産を所有して事業を行うべきか、それとも借りて事業を行うべきかを検討しているが、どちらがベストか迷っています。
将来的には、現在の場所で事業を継続するべきかどうかも悩んでいます。
不動産を借りる場合と所有する場合で、経営への影響がどのように異なるのかを知りたいと思っています。
そこで、今回の記事では企業の不動産の「所有戦略」と「賃貸戦略」に焦点を当て、それぞれのメリットとデメリットについて詳しく説明します。
これにより、あなたは自分の事業に適した不動産戦略を選択することができるようになるでしょう。
資産として不動産をもつ
法人の中には自社ビルを所有しているところもあります。資産価値がある反面、会社の移転には足かせになります。
コストへの影響
企業は必ず何かしらの拠点を持っています。
例えば、事務所、倉庫、工場、店舗、駐車場、資材置場、遊休地などがあります。
これらの不動産は企業が所有するか、賃貸契約をして使用しています。
不動産を所有する場合、固定資産税や都市計画税などの経費が発生します。
さらに、不動産の購入に借入金を利用している場合は、返済も必要です。
一方、不動産を賃借する場合は、家賃や地代などの経費が発生します。
売上への影響
営業拠点の位置決めは、営業活動の容易さや取引先との近さ、顧客数、信頼性などに直結するため、売上にも大きな影響を与えます。
したがって、営業拠点を「所有する」か「借りる」かを決める際には、コストだけでなく売上も考慮する必要があります。
しかしながら、実際に保有か賃貸かを検討する際には、コストばかりに目が行く経営者が多いという問題があります。
保有か賃貸かの選択は、自社のビジネスモデルを考慮し、長期的な視点で判断しなければなりません。
このため、次の章では不動産の保有と賃借の違いについて、それぞれの経営へのメリットとデメリットをご紹介します。
法人が不動産を所有するメリットとデメリット
法人が不動産を所有することのメリット・デメリットです。
法人が不動産を所有するメリット
不動産を保有することによって、地代や家賃に比べて支出を抑えることができます。
さらに、建物を所有すると、減価償却による節税のメリットがあります。
建物は資産として計上され、減価償却費として会計上の利益を減らすことができるため、税金を抑えることができます。
また、自己資金で不動産を保有する場合、借り入れるよりもコストが低くなるばかりか、税金も少なくなります。
さらに、不動産は担保として利用できるため、お金を借りる際も有利になります。
また、経営難に陥った場合でも、不動産を売却することができるため、企業の立ち直りが早くなります。
不動産を持つことは、資産を持たない会社に比べて非常に有利な点があります。
さらに、遊休地がある場合には、有効に活用することもできます。
また、固定資産税は一般的に家賃よりも安いため、不動産を保有することで費用を抑えることもできます。
法人が不動産を所有するデメリット
不動産を保有する企業にとって、最大のデメリットは環境変化に対応しにくいことです。
特に店舗などの場合はこのデメリットがより顕著です。
例えば、街全体が高齢化したり、競合他社が新たな店舗を出店したり、大規模な商業施設が立ち上がったりすると、ビジネス環境が大きく変化し、売上高が急激に低下することがあります。
このような場合、店舗を簡単に移転することができないというのがデメリットの一つに挙げられます。
また、不動産を購入するために借入金を利用している場合、借入金の返済が発生します。
借入金の元本返済は、法人税を支払った後のキャッシュフローの中で行われるため、十分な現金を確保できていない場合は返済が困難になる可能性があります。
さらに、不動産を所有している場合は修繕費もかかります。
修繕費は突発的に高額な費用が発生する場合が多く、企業の経営に予期せぬ損害をもたらすことがあります。
一方で、不動産を保有することには経費として計上することができるため、税金対策になり得るというメリットがあります。
以上が不動産保有のメリットとデメリットについての解説でした。
次に、賃貸の方についてメリットとデメリットをご紹介いたします。
法人が不動産を所有せずに賃貸にしたときのメリットとデメリット
法人が不動産を賃貸することのメリット・デメリットです。
法人が不動産を所有せずに賃貸にするメリット
賃貸の利点の一つは、環境の変化に柔軟に対応することができることです。
例えば、仕事の都合で引っ越す必要がある場合や、家族の事情によって住む場所を変えなければならない場合でも、賃貸なら比較的簡単に新しい場所に移ることができます。
もう一つの利点は、借入過多になりにくいことです。
賃貸では、住む家の所有権を持たずに家賃を支払うだけですので、住宅ローンを組む必要がありません。
そのため、大きな借金を抱えるリスクが少なくなります。
また、修繕費が不要な点も賃貸のメリットです。
一軒家やマンションを所有する場合、建物の修理やメンテナンスには多額の費用がかかります。
しかし、賃貸では、故障や損傷があった場合でも、通常はオーナーが修繕を行うため、自分で負担する必要がありません。
さらに、賃貸ならドミナント出店や多店舗展開がしやすい利点があります。
ドミナント出店とは、一つのエリアに数多くの店舗を出店し、その地域の市場を支配し、仕入れや人材を効率化する戦略のことです。
賃貸は初期投資が少ないため、ドミナント出店や多店舗展開を行いやすいのです。
最後に、賃貸のもう一つのメリットは、賃料の値下げが可能な点です。
経済的な理由や需要の変動などによって、賃料の引き下げが必要な場合でも、オーナーや不動産会社との交渉によって比較的容易に実現できる場合があります。
法人が不動産を所有せずに賃貸にするデメリット
法人企業が不動産を所有する場合、地代や家賃、更新料などの支払い費用が発生します。
また、敷金や内装工事費用、原状回復費用なども支払う必要があります。
さらに、店舗系の企業が大型商業施設などに出店する場合は、看板や営業時間、プロモーション活動などに制約があります。
場合によっては売価の指示も受けることがあります。
これは、テナントとして入居するため、不動産のオーナーから一定の規制を受けることによるデメリットです。
自由度が低下することがあります。
しかし、賃貸のメリットとしては、環境変化に柔軟に対応できるという点があります。
不動産を所有することなく移転や拡大などが比較的容易にできるため、経営の変化に合わせて事業展開を行うことができます。
以上が賃貸のメリットとデメリットについての詳しい説明でした。
では、法人企業は最終的にどのように不動産を取り扱うべきでしょうか。
不動産を保有すべき法人と賃貸にすべき法人
企業は、業種や業態に応じて、不動産を保有することと賃貸することのどちらが適しているかを考える必要があります。
ただ単にお金の損得だけを基準にして、不動産を保有するか賃貸するかを決めるのではなく、自社のビジネスモデルに合った不動産戦略を策定するべきです。
例えば、製造業の場合、製品の生産プロセスに大量のスペースや特定の設備が必要な場合があります。
そのため、製品を製造するために不動産を保有することが有益な場合があります。
一方で、小売業の場合は、流動的な需要に対応するために販売スペースを柔軟に変更できる必要があるため、不動産を賃貸する方が適しているかもしれません。
また、企業の成長戦略や市場の変化に応じても不動産戦略を変える必要があります。
例えば、新たな拠点を開設する場合は、現地の不動産市場や経済状況を分析し、保有するか賃貸するかを判断する必要があります。
また、需要が減少している地域では、余剰な不動産を売却することが有効な戦略となるでしょう。
総じて言えば、企業の不動産戦略は、経営目標や業種業態の特徴、市場の変化などを総合的に考慮し、最適な選択をする必要があります。
不動産を保有するか賃貸するかは、単純な損得だけで判断するのではなく、ビジネスモデルに合った戦略的な判断を行うことが重要です。
不動産を保有すべき法人
まずは、不動産を保有しても良いケースを詳しくご説明いたします。
不動産を保有しても良いケースとしては、「環境があまり変わらない」形態のビジネスモデルが保有に向いています。
具体的な例を挙げると、インターチェンジの近くに位置する物流倉庫や埋立地に立地する物流倉庫、本社に近い工場などが挙げられます。
これらの倉庫や工場は、所有戦略が向いていると言えます。
なぜなら、周辺環境があまり変化しないため、競合他社よりも立地の利便性を重視するような業種や業態であれば、思い切って不動産を購入してしまうのも一つの選択となるからです。
例えば、物流倉庫の場合、インターチェンジに近い立地は、物流の効率性や顧客への迅速な対応を重視する業界において非常に重要な要素となります。
同様に、埋立地にある物流倉庫も周辺環境が変化しにくく、長期的な安定性が見込まれるため、不動産を保有することが有益です。
また、本社に近い工場も同様の理由から不動産を保有しても良いでしょう。
本社と工場の距離が近いことで、管理や監督がしやすくなりますし、物流や取引のスムーズさも向上します。
つまり、不動産を保有するケースでは、周囲の環境があまり変わらないビジネスモデルであり、立地利便性が重要な要素となるような業種や業態が最適です。
これらの場合、不動産を購入してしまえば、長期的な安定性や効率性の向上など、多くのメリットが期待できます。
不動産を賃貸にすべき法人
次に、不動産を賃貸することが適しているケースを詳しく説明いたします。
不動産を賃貸することが適しているケースとしては、内部環境や外部環境が頻繁に変化するビジネスモデルが挙げられます。
まず、内部環境が変わりやすいケースでは、成長企業で従業員数が年々増加している事例が該当します。
特にIT企業のような急速な成長を遂げる会社がこれに当たります。
彼らは自身の変化が非常に速いため、賃貸でなければこのペースに合わせることができません。
また、外部環境が変わりやすいケースでは、主に店舗を中心に考えることができます。
例えば、近隣の大型商業施設が閉店したり、競合他社が直近で出店したりするような場合です。
こうした環境の変化が起こると、売上が低下する場合が多いのです。
しかし、賃貸の場合、環境の変化に応じて出店や撤退を行うことが比較的容易です。
このように、不動産の保有か賃貸かを判断する際には、単に経済的な損得だけで判断するのではなく、長期的な視点で自社のビジネスモデルに適合するかを考えることが重要です。
自社のビジネスモデルがどのような特徴を持ち、どのような変化が予測されるかを考慮した上で、保有か賃貸の選択を行うようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。不動産と言っても所有と賃貸ではそれぞれメリットとデメリットがあり、一概には決められません。
法人が不動産を所有するか、賃貸するかという決定は、将来に大きな影響を及ぼす重要な決断です。
この選択は、単に財政面だけでなく、長期的な視野を持って慎重に考える必要があります。
まず、不動産の所有戦略について考えましょう。
不動産を所有することには、以下のようなメリットがあります。
まず、不動産の所有により、会社は固定資産としてそれを使い続けることができます。
また、不動産の所有者は、賃貸市場の変動に左右されず、自由に物件を管理することができます。
さらに、不動産の価値は時間と共に増加する可能性があり、将来的な売却益を期待することもできます。
一方、賃貸戦略では、不動産を賃貸することになります。
賃貸によるメリットとしては、初期の投資費用が少なくて済むことが挙げられます。
また、賃貸契約の期間や条件を柔軟に調整することができ、経営上の変化に対応しやすくなります。
さらに、不動産のメンテナンスや修繕などの責任は、賃貸人に委ねられるため、管理の手間が軽減されるという利点もあります。
どちらの選択肢を採用するべきかは、会社の戦略や経営目標によって異なります。
具体的には、以下のような点を考慮する必要があります。
まず、不動産の購入には多額の資金が必要ですので、長期的な投資計画や財政状況を考慮する必要があります。
また、会社の成長や事業展開の予測も重要です。
将来的に拡大することが予想される場合は、不動産を所有することで、物件の利用を確保しやすくなります。
総合的に考えると、不動産の所有戦略と賃貸戦略は、企業の将来に大きな影響を与える重要な選択です。
慎重な検討を行い、会社の戦略と目標に沿った選択をすることが重要です。
ただし、将来にわたっても適切な対応を取るために、市場の変動や経営上のニーズを常に監視し、必要に応じて戦略の見直しや調整を行うことも大切です。
自社の状況をよく見てお考え下さい。