相続空き家の譲渡所得3000万円特別控除とは
国内の空き家が増加していますが、遺産相続などで承継した空き家を売却する際には、特別控除が適用される場合があります。
この特別控除では、譲渡所得から最大で3,000万円が控除されることになります。
通常、不動産の譲渡益には高い税率がかかりますが、この特別控除を利用することで税負担を軽減することができます。
そのため、将来的に利用する予定のない空き家であれば、売却を検討することができます。
ただし、特別控除を受けるにはいくつかの条件を満たす必要があります。
空き家の処分方法によっては特別控除が使えない場合もある
建物の状態によっては、空き家を処分する際に取り壊しを行う必要があります。
また、空き家を長期間保有し続けることで、特別控除を利用することができなくなる場合もあります。
それぞれの条件をよく把握しておくことが重要です。
おひとりさまの状態で住んでいた場合に特別控除を利用できる
特別控除は、亡くなった方が「おひとりさま」の状態で住んでいたことが条件となります。
ただし、2019年4月1日の税制改正により、適用範囲が拡大されました。
以下の条件を満たす場合は、被相続人が自宅に住んでいなくても特別控除を利用することができます。
– 被相続人が介護保険法で規定される要介護認定を受けており、老人ホーム等に入所し、相続開始の直前まで入所していた場合 – 老人ホーム等に入所してから相続開始の直前まで、相続された家屋について被相続人が一定の使用をしており、事業や貸付けの用途に使われたり、被相続人以外の人が居住用に使っていなかった場合 なお、一定の使用を証明するためには、外泊の記録や光熱費の領収証などの証明書類が必要となります。
昭和56年5月31日以前に建てられた建物
建築物の耐震基準は、昭和56年6月1日から大きく変わりました。
そのため、昭和56年5月31日以前に建てられた建物は、旧耐震基準を満たしているため、震度5強程度の中地震にしか耐えられないことが多いです。
そのため、建て替えや耐震補強が求められています。
相続した空き家も同様であり、昭和56年5月31日以前に建てられた場合、特別控除を利用することができません。
その場合は、解体して更地にするか、耐震補強して売却する必要があります。
耐震基準は建築確認通知書で確認することができます。
ただし、耐震補強して売却する際には、一級建築士が発行する耐震基準適合証明書が必要となります。
空き家の継続
特別控除を受けるためには、相続開始から売却する日まで、空き家の状態が継続している必要があります。
空き家を貸していたり、更地にした土地を別の用途で使用していると、特別控除は利用できませんので、ご注意ください。
空き家の状態の継続を確認するためには、確定申告の際に市町村へ以下の書類を提出し、被相続人居住用家屋等確認書を受け取ります。
– 売買契約書のコピー – 電気またはガスの閉栓証明書、水道の使用廃止届出書 – 空き家の使用状況が分かる写真 – 固定資産税の課税明細書のコピー 被相続人居住用家屋等確認書は、確定申告の際に必要な書類なので、大切に保管してください。
売却代金の条件
相続した空き家を売却する場合、売却代金(譲渡価格)が1億円以下でなければ、3,000万円の特別控除を利用することはできません。
売却が複数回に分かれる場合も、通算して売却代金が1億円以下かどうかが判断基準となります。
譲渡期限
特別控除の特例には期限がありますので、相続した空き家を譲渡する場合は、2023年(令和5年)12月31日までに譲渡する必要があります。
不動産の売却には時間がかかる場合もあるため、売却を決定したら、早めに不動産会社と相談することをおすすめします。
併用可能な特例
居住用財産の譲渡には、他にも特例が設けられており、相続した空き家の3,000万円の特別控除と併用することができるものもあります。
譲渡所得からの特別控除や、譲渡益を将来に繰り延べる買い換え特例などがあり、これらと相続した空き家の特別控除を併用することが可能です。
併用可能な特例の詳細についても解説しますので、有利に譲渡するために、適用条件などをしっかり理解しておいてください。
税制における居住用財産の3,000万円特別控除とは
もしも自分のマイホームを売却して利益が出た場合、以下の条件を満たしていれば、その利益から3,000万円を控除することができる制度です。
この特別控除は、自宅の所有期間に関係なく利用でき、相続に伴う空き家の3,000万円控除とも併用できますが、控除金額は最大で3,000万円となります。
この特別控除を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
1. 売却する物件が居住用財産(マイホーム)であること。
2. 特別な関係(親子、夫婦など)にある人に対して売却しないこと。
3. 空き家になった日から3年後の12月31日までに売却すること。
4. 家屋の解体日から1年以内に譲渡契約を結び、空き家になった後の3年後の12月31日までに売却すること。
5. 家屋の解体日から譲渡契約の締結日まで、賃貸業などに利用していないこと。
特定の居住用財産の買換え特例とは
自宅を令和3年12月31日までに買い換えた場合、新しい自宅を売るまで課税を先送りする制度です。
この特例を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
また、相続に伴う空き家の3,000万円特別控除とも併用することができます。
1. 新しい自宅の居住期間と所有期間がともに10年以上であること。
2. 空き家になった日から3年後の12月31日までに売却すること。
3. 売却代金が1億円以下であること。
4. 家屋の解体日から1年以内に譲渡契約を結び、空き家になってから3年後の12月31日までに売却すること。
5. 家屋の解体日から譲渡契約の締結日まで、賃貸業などの目的に利用していないこと。
6. 特別な関係(親子、夫婦など)にある人に対して売却しないこと。
7. 新しい自宅の床面積が50㎡以上であり、土地面積が500㎡以下であること。
8. 前年から翌年までの3年の間に売却した年の前年に買い換えること。
9. 中古住宅を買い換える場合、取得日から起算して25年以内の建物であるか、一定の耐震基準を満たしていること。
住宅ローン控除とは
住宅を購入する際の税負担を軽減する制度であり、住宅ローンの年末の残高の1%を所得税から控除することができます。
つまり、住宅ローンを組む際に支払う利息の一部を控除することができます。
この制度は、自分が利用する住宅に対してのみ適用されます。
相続後に自宅が空き家になった場合でも、以下の条件を満たせば小規模宅地等の特例が使えます。
まず、相続時の評価額が330㎡までの敷地を持つ小規模宅地である必要があります。
相続税の申告期限まで自宅を所有し、住み続けていなければなりません。
次に、以下のケースで相続空き家の3,000万円控除と併用できます。
1. 被相続人の配偶者が自宅を取得する場合 2. 被相続人と同居していた相続人が自宅を取得する場合 3. 被相続人に配偶者や同居親族がいない場合、相続前の3年間を借家住まいしていた相続人が自宅を取得する場合 以上の条件を満たす場合、相続後に空き家となっても小規模宅地等の特例を利用することができます。
この特例を使うことで、相続時の評価額を80%減らすことができます。
さらに、相続空き家の3,000万円控除も利用できるため、複数の税金控除を併用することができるのです。
相続空き家の特別控除とは、どのような制度なのか
相続空き家の特別控除とは、被相続人と同居する配偶者や法定相続人がいない場合、自宅を相続した者が過去の3年間に自分の持ち家や配偶者の持ち家、親族や同族会社の所有する家屋に住んでいないこと、相続した自宅を過去に所有していないことなどの条件を満たす相続人が利用することができる制度です。
この制度は、相続後に賃貸マンションや社宅などに暮らしている相続人が自宅を相続した場合に適用されるものであり、そのために「家なき子特例」とも呼ばれています。
特別控除の手続きと注意点
相続空き家の特別控除を利用するためには、まず小規模宅地等の特例を使って相続税の申告期限まで自宅に住み続ける必要があります。
相続税の申告期限は相続発生から10ヶ月後となっているため、相続後すぐに自宅を売却することはできませんので、注意が必要です。
また、相続税の取得費加算とは併用できないため、相続税の申告と特別控除の手続きを別々に行う必要があります。
相続税の取得費加算について
相続した自宅を売却し、利益が出た場合は譲渡所得税などが課税されますが、「相続税の取得費加算」を利用することで税額を圧縮することができます。
この制度は、相続した自宅などを一定期間に売却した場合に、その財産に課税された相続税を取得費として計上できるものです。
ただし、相続空き家の特別控除とは併用できず、どちらか一つを選択することになります。
適用条件としては、相続または遺贈により取得した財産であり、相続税を納税していること、そして相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していることが求められます。
特別控除の適用範囲と注意点
特別控除の適用範囲について注意が必要です。
特に、同一不動産である場合には、相続空き家の特別控除と相続税の取得費加算を併用することはできません。
ただし、自宅と店舗などが別々の不動産として存在する場合には、それぞれに対して特例を適用することができます。
そのため、不動産に応じた最適な方法を選択することが重要です。
相続空き家の特別控除の利用に関しては、具体的なケースによって適用できるかどうかが異なるため、判断に迷った場合には専門家に相談することをおすすめします。
共有名義の不動産の場合
共有不動産の場合、共有者との合計売却代金が1億円以下かどうかを判断します。
ただし、共有者が異なる時期に譲渡した場合は、相続開始後の最初の譲渡日から3年後の12月31日までの譲渡を合計して、1億円以下かどうかを判定します。
共有不動産の場合、売却代金が1億円以下であれば、控除の対象となることになります。
店舗兼自宅の場合
不動産が店舗と自宅の両方を兼ねている場合、売却代金の合計が1億円以下かどうかを判断します。
ただし、自宅の部分だけでなく、不動産全体の売却代金が1億円以下であるかを注意して判定する必要があります。
つまり、居住部分だけで判定するのではなく、店舗部分も含めた売却代金が1億円以下であることが条件です。
共有名義の自宅売却時、各共有者の控除額は?
共有者ごとに3,000万円の特別控除を利用することができます。
例えば、共有者が2人であれば、合計で6,000万円の控除が適用されます。
また、共有者が3人の場合は、合計で9,000万円の控除が適用されることになります。
1次相続と2次相続の場合、全体の控除対象は?
例えば、父親が亡くなり、その際に母親と子1人がそれぞれ1/2の持分を相続したとします。
その後、母親が亡くなり、子が母親の持分の1/2を相続して自宅全体を所有することになった場合、母親から相続した部分である1/2の持分のみが3,000万円の控除の対象となります。
実家の管理について考える必要性
実家は多くの思い出が詰まっているため、簡単に手放すことはできないと感じる方も多いかと思います。
しかし、空き家にしておくことには注意が必要です。
所有しているだけで固定資産税や都市計画税が発生し、適切な管理がされていないと家屋の劣化も進みます。
さらに、建物が危険な状態になってしまったり、倒壊の危険性がある場合には、「行政代執行」によって強制的に解体される可能性もあります。
この場合、解体費用は所有者に請求されますので、管理の重要性を念頭に置いておく必要があります。
相続空き家の特例
税理士に相談して最適な手続きを確認しましょう 空き家が相続された場合、相続税の対象となりますが、相続空き家には3,000万円の控除が適用されるだけでなく、さまざまな特例も存在します。
これらの特例は、相続空き家が負の財産になってしまう可能性がある場合に、有効な対策となることがあります。
たとえば、相続人が空き家を売却することを考えている場合、相続税法では相続人に対して「不動産の売却による特例」が認められています。
これにより、売却によって発生する損失を相続財産から控除できることになります。
また、相続人が相続空き家をリフォームする場合には、「居住用財産に対する特例」が適用されることがあります。
この特例では、リフォームにかかる費用を相続財産から控除できるため、相続空き家を有効活用するための手段として有用です。
さらに、相続人が相続空き家を賃貸する際には、「空き家の賃貸に関する特例」が適用されることがあります。
この特例では、相続人が所得税や住民税の面で優遇されることがあります。
まとめ
このような特例を活用するためには、税理士に相談して最適な手続きや対策を確認することが重要です。
税理士は、個々のケースに合わせたアドバイスを提供し、相続空き家のご所有者にとって最適な方法を助言してくれます。
相続空き家を負の財産にする前に、早めに税理士に相談しておくことをおすすめします。